本研究ではアミノ酸から容易に誘導可能な2-アミノフェノキシ酢酸類のオリゴマーが、そのアミドプロトンとエーテル酸素間に連続した水素結合が生じ、三中心水素結合を形成し、らせん構造を誘起することを見出した。本研究では、その詳細について検討した これまで合成した末端に2-ニトロフェノキシ酢酸を用いたオリゴマーでは、発色団がことなるためUVおよびCDスペクトルが複雑であったが、ニトロ基をアミノ基へ還元し、メトキシ酢酸と縮合することで、らせん誘起が容易に評価できた。その結果、以下の知見を見出し発表した(日本化学会第87春季年会口頭発表)。 (1)不斉炭素がないと、らせん構造は誘起されないが、α-位に不斉炭素を導入するとヘリックス構造が形成され、ベンゼン環のスタッキングによるUVスペクトルにおいて淡色効果が確認された。 (2)CDスペクトルがらせん誘起には、N末端側への不斉炭素導入が効果的であり、C末端側では、立体反発のため効果的ならせん誘起に至らなかった。 (3)すべてのα-炭素に不斉炭素を導入したオリゴマーのらせん構造では、シクロヘキサン中ではベンゼン環のスタッキングによる淡色効果が確認できた。一方、メタノール中では淡色効果は確認できなかったことがら、異なるねじれ構造の存在が示唆された。 2.関連する化合物として3-アミノフェノキシ酢酸の環状三量体を合成した。三中心水素結合を形成しないが、そのα-位の不斉炭素に制御されたボウル型の化合物となることを見出し報告した(日本化学会第87春季年会口頭発表)。
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