研究概要 |
昨年度2-ニトロフェノキシ酢酸を用いたオリゴマーでは,末端の発色団が異なるニトロ基であるためUVおよびCDスペクトルが複雑で評価が困難であったが,ニトロ基を還元し,発色団を同一のメトキシ酢酸アミドに変換することで,らせん誘起の評価が容易することができた。あわせて,ベンゼン環のスタッキングによるUVスペクトルにおいて淡色効果が確認された。本年度はこの知見を利用して,三中心水素結合で形成されるホルダマーのキラルらせん構造の制御と機能化の研究を行った。 1.側鎖の異なるホルダマーの合成とオリゴマー特性の解明:本年度は側鎖間の分子間相互作用を期待してロイシンから誘導できるイソブチル基をもつホルダマーを合成した。 側鎖がイソブチル基の場合でも,らせん構造の誘起とベンゼン環のスタッキングによるUVスペクトルでの淡色効果が確認された。 概ね,側鎖がメチル基と同様であったが,ホルダマー形成にともない,イソブチル基の末端メチル基がNMRの化学シフトが高磁場シフトするなど新たな知見を見つけた。 らせん構造の誘起は確認できたが,ロイシンジッパーのようなα-ヘリックスが互いに集まったバンドル構造の形成の確認には至らなかった。通常バンドル(束)構造はため,分子集合体としてのバンドル形成能はタンパク質の機能と深く関わり,人工ペプチドとしても重要である。今後,疎水性相互作用を取り入れるなどバンドル形成による機能を発展させたい。 2.関連して3-アミノフェノキシ酢酸の環状三量体の化合物の物性を調べ,溶媒や側鎖の影響を受けないボウル型であることを確認した。
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