研究概要 |
極性による相互作用を持つゲストの動的挙動や集団状態について、ゲストが3次元および1次元配列した場合を次の1,2に、もう一つの目標、スピンが絡む物性開発は3に述べる。 1.[N(CH3)4][MCu(CN)4]・G系、M=Cd,G=HCC13(A)、M=Zn,G=H2CC12(B)の各包接体。 (1)Aにおいて175Kで相転移によるフェロ的な配向秩序化が観測された。 (2)これがゲストの極性に起因するのか、Aよりも強い極性を持ち、より堅牢なホストを持つBで観測したところ、相転移はなくゲストは再配向運動を続けた。(1)の結果には、AのCd金属錯体ホストの構造柔軟性の寄与があると考えられたが、Bについてより低温での検討も必要である。 2.Cd(1,6-da)Ni(CN)4・G系、G=ベンゼン(C)、ピロール(D)、フルオロベンゼン(E)の各包接体。 (1)Cより、極性による相互作用のない場合のゲストの運動性と活性化エネルギーEaを見積もったところ、面内回転運動をしており、そのEaは約4.5kJmol-1と極めて低く、上記の目的には適した場であることが確認できた。 (2)D,Eでのゲスト運動は、180度反転した2つのサイトに存在率の大きな面内回転運動で、イジング的な再配向運動と相互作用によるEaの増加を確認できた。 (3)D,Eでデバイ型の誘電分散が観測された。これより、協同的なゲスト運動はないが、逆に10K程度まで配向秩序化が起こらないことが示唆された。マクロな系で、このような低温まで運動凍結が起こらないのはあまり例がない。今後熱容量測定を行う予定である。 3.Fe(bpy)Ni(CM)4ホスト。 合成したホストが極性ゲスト吸着によりベイポクロミズムとスピンクロスオーバーを示すことを拡散反射スペクトル、磁化率、メスバウアより確認したが、試料の安定性に問題が残った。
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