人間の味覚・嗅覚のように認識特性の異なる多数のセンサーをアレイ状に並べた蛍光センサーアレイを作成し、分析対象とする分子群の分子骨格の違いをセンサーアレイの応答性の違としてパターン化したデータベースを作成し、未知の分析対象分子がどのような分子骨格を有しているかを、データベースと比較することにより推定するシステムを構築することを本研究では目的としている。このセンサーアレイを作成するためには、多種多様な応答を示す多種類のレセプターを用意する必要があるが、本研究では申請者らが最近開発した分子骨格を識別するレセプターおよび従来から研究を行ってきたレセプター群に多様性を持たせるような化学修飾をさらに行うことにより作成する。 グルコースが6個からなるα-CDを基本骨格とした蛍光センサーの分子認識特性について検討を行った。炭素数が5から8の鎖状ならびに環状アルコールに対する応答性を調べた。鎖状アルコールは、炭素数が増えるに従い結合定数が大きくなる。一方、炭素数が7までは、炭素数が大きくなると蛍光強度変化は大きくなるが、炭素数8のアルコールの蛍光強度変化が他と比べて小さいことがわかった。これは、炭素数8のアルコールの長さがCD空洞よりも長いために、蛍光強度が変化しにくい包接構造を取るためと思われる。従って、この蛍光センサーを利用することにより、分子サイズを明確に識別できることがわかる。一方、環状アルコールは結合定数や蛍光強度変化の炭素数依存性が小さいこともわかった。
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