次世代のポリマー光ファイバーによる光通信に、相性のよい高分子レーザー素子が望まれている。本研究では、新規高分子レーザー発振媒体として、光増感型デンドリマーに着目し、分子内エネルギー移動によるクロモフォア(発光中心)励起による増幅自然放出光(ASE)について検討を行った。 光増感型デンドリマーは、異なる構造のアントラセンユニットとペリレンユニットを予め数種類合成を行い、それぞれのユニットのエーテル化反応により、様々な組み合わせのデンドリマーを合成した。アントラセンユニットを選択的に励起した蛍光測定において、ペリレンの発光が生じたことから、効率のよいエネルギー移動が生じていることが示された。 スピンコート法によりガラス基板上に作製したポリスチレン薄膜に、ナノ秒Nd:YAGレーザーの第三高調波(355nm)で励起を行ったところ、アントラセンを内殻に有するデンドリマーにおいては、励起光強度を増加していくと、発光スペクトルの半値幅が狭くなる(FWHM=47mm)ことが観測され、これはASEによるものであることが確認された。一方、デンドリマーの内殻にアントラセンを有しないものは、若干のアントラセンの発光が見られ、発光スペクトルの半値幅は84nmであり、ほとんど先鋭化が見られなかった。これらのことは、デンドリマー内部に有するアントラセンへのエネルギー移動を経由することにより、効率よくデンドリマーコア部のペリレンを励起することができることを示しており、エネルギー移動効率がASEに大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。
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