計画の最終年度として、前年度までに構築した分子を用いて実際にデバイス化を試みた。デバイス化に際しては、以下の3つの方法で評価した。まず第一に、カーボンを基盤とするITO電極表面に物理的に吸着させ(実際には塗布した)機能性分子修飾材料を構築した。この酸化還元挙動をサイクリックボルタンメトリーにより評価したところ、酸化還元に伴う信号の検出には成功したが、サイクル中に信号が弱くなり電極から化合物が脱りすることがわかり、再現性に乏しかったことから化学的な吸着を試みることにした。第二として、本機能性化合物が電荷を有していることから、電極表面に正電荷を導入することで静電的な相互作用を期待した。電極材料としては表面が比較的均一で修飾を行いやすいカーボンナノチューブを用いた。カーボンナノチューブ表面に正電荷を有するアンモニウム塩を導入し、機能性分子を溶解した溶液に浸漬することで電極を調整した。このサイクリックボルタンメトリーを測定したところ、NO分子の検出が可能であったが、吸着分子数が少なかったことからカーボンナノチューブ本体のNO検出能に対して優位な差を生じたとは言えなかった。したがって修飾分子数の増加ならびにその安定化がデバイス化において重要であることがわかった。そこで、機能性分子の中でジチオール結合を有し電極表面と化学的吸着が可能な化合物を用いて、金電極に自己集積化を通じて電極を作成した。本電極は機能性分子の酸化還元挙動が比較的大きく、物理的、静電的な吸着と比較して大きな電流を与えた。このように科学的な修飾を行うことで、電極化への応用が可能であることが示された。
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