研究概要 |
DNA、酵素、抗体などの生体ポリマーと同等あるいはそれをも凌駕する高度なポリマー認識能をもつ人工ホスト分子の開発は、酵素や抗体などの分子認識能をもつ生体ポリマーの作用機序解明のモデルとして有用であるのみならず特定の分子量ならびに立体構造をもつポリマーを高精度に分離・検出できる材料へと展開できることから、学術的にも工業的にも極めて重要である。本研究では、特定の構造をもつポリマーを高選択的に識別できるホスト分子の開発を目的として、三種類のホスト分子、すなわち、(1)完全メチル化α-シクロデキストリン(Me-α-CD)のグルコシド結合の一つをβ-1,4グルコシド結合に変換した骨格変換CD、(2)アミロースの2,3位水酸基を部分的にメチル化した部分メチル化アミロース(MA)ならびに(3)γ-シクロデキストリン(γ-CD)を用いて、種々のポリマーとの包接錯体形成挙動について検討した。骨格変換CDは、従来のCD誘導体とは異なり、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)やポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)などの直鎖状高分子よりも側鎖に置換基をもつ側鎖型高分子と選択的に包接錯体を形成することがわかった。特に、従来のCD誘導体では不可能とされていたポリアクリル酸との包接錯体形成が実現できることを見出した。また、アミロースの水酸基を部分的にメチル化することで、アミロースでは困難とされていたポリマーとの包接錯体形成が可能となることを見出した。この部分メチル化アミロースは、側鎖型高分子よりもPTHFやPCLなどの直鎖状高分子と選択的に包接錯体を形成することがわかった。さらに、γ-CDをホスト分子に用いて立体規則性ポリメタクリル酸メチル(PMMA)との包接錯体形成について検討を行ったところ、シンジオタクチック(st-)PMMAよりもイソタクチック(it-)PMMAと高選択的に包接錯体を形成することがわかった。
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