自律運動体(脂肪酸エステルを含む油滴、有機金属錯体を含む油滴、又は樟脳誘導体を含む固相)から展開される界面活性分子について、「表面濃度と表面圧」の関係に依存した運動モードのスイッチング現象を実験したところ、錯体の安定度と温度の関係から界面自由エネルギーを導くことができた。具体的には、錯体形成の安定度が高い(鉄イオンやコバルトイオンなど)ほど、反応時間が長く、間欠時間が増加し、逆に、安定度が低い(カルシウムイオンやマグネシウムイオン)と反応が起こらず、連続運動のみであった。また、停止と運動が交互に繰り返される間欠運動について、界面活性物質の化学構造に依存した「表面濃度と表面圧」曲線の関係が明瞭になり、普遍的な理論を構築することができた。 次に、外部反応場の境界に幾何学的形状を導入し、その形状に依存して変化する「流れ」の様相を自律運動にフィードバックする実験を行った。具体的には、外部反応場が移動又は変形可能(高分子ゲル)な場合、「流れ」の方向に依存して外部反応場が移動又は変形することから、反応場の形状変化に依存した、自律運動体の運動の様相変化を制御する実験、すなわち「外部境界と結合した内部自律運動系」の実験を行ったところ、外部反応場や自律運動体の形状やスケールを制御パラメータとして、これらの「分岐と履歴」の特徴を利用した運動モードのスイッチングの実験系を構築することに成功した。 また、購入した赤外線サーモグラフィーの測定により、界面での反応熱の時空間的な変化を観測することに成功し、自律運動系のエネルギー変換機構を知る重要な知見を得ることができた。それにより、駆動力となる界面活性物質の溶解熱と運動の関係が明らかになった。
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