LiBrは臭化インジウムLnBr_3と3:1や1:1の化合物を形成し、共に315K以上で超イオン伝導相に転移することを報告した。これらの構造は前者では層状構造、後者は欠陥スピネル構造であるが、共に原料である岩塩型のLiBrと共通点がある。すなわち、これらの結晶は臭化物イオンによる立方最密充填格子が基本となっており、3つのLi^+をIn^<3+>と2つの空孔で置換した構造と考えることができる。そこで本研究ではLiInBr_4構造の精密化やLiBr-InBr_3系における連続固溶体形成の可能性を、導電率測定、^7Li、^<115>In NMR、高分解能X線回折、熱測定から検討した。 高分解能粉末X線回折より超イオン伝導相のLiInBr_4は立方晶の欠陥スピネル構造で記述できるが、さらに詳細に検討した結果、体積にして1/16の菱面体晶系でさらによく表現できることが明らかとなった。この構造では3回軸に垂直にInBr_6八面体で形成された層とInが存在しない層が交互に重なり合っており、Inの分布状況がスピネル構造とは少し異なっていた。またInのサイト占有数は0.5で統計的に分布しており、Liも同様に無秩序状態を取り、特に超イオン伝導相ではリチウムイオンは動的無秩序状態と考えられる。全体としては対称性の高い構造であるが、カチオンの分布が統計的であるために局所的には歪が多く室温ではスピンエコーによるブロードな^<115>In NMRしか検出できない。超イオン伝導相への転移温度以上では活発なLi^+の拡散により先鋭化した^<115>In NMRが検出でき、温度と共にその強度を増加させた。しかしながら、その高いイオン導電率のもかかわらず^7Li NMRは顕著な尖鋭化を示さないため、その原因と伝導機構をさらに検討する必要がある。 一方、LiBrに10%程度InBr_3を固溶させたLi_<1-x>In_<x/3>Brを合成し、その構造と物性を検討した。粉末X線回折のデータにはLiBr以外の不純物のピークはなく固溶の可能性を示唆しているが、格子定数やピーク強度からは確実な固溶体形成を確認できなかった。しかし、320K付近で導電率の急激な上昇が観測され、In^<3+>の固溶の効果が観測できた。
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