固体のもつ機能の1つとしてイオン伝導性があり、イオン伝導性固体は燃料電池やリチウム二次電池の固体電解質としてそれらの開発が注目されている。この研究では岩塩型構造をもち超イオン伝導体の可能性があるLiBrをInBr_3で複塩化したLi_3InBr_6とLiInBr_4の静的・動的構造をX線回折と固体NMRで追跡した。分解能と感度の高いX線回折計を用いて測定したデータをリードベルド解析することにより、これらの構造は基本的に岩塩型構造を維持していることを確認した。すなわち電気的中性の原理に従い3つのLi^+のカチオンサイトを3価のIn^<3+>と2つの空孔で置換した欠陥岩塩型構造が基本となっていることを明らかにした。結晶学的にはLiInBr_4の構造は空間群Fd3mの欠陥スピネル構造であるが、四面体間隙にカチオンが存在しないため、欠陥岩塩型構造とも考えられる。この構造では空の八面体間隙が2次元的に広がりイオン伝導に適した層が形成されている。またこの系における超イオン伝導体の共通の特徴として、一部のIn^<3+>の位置に関する無秩序が観測された。In^<3+>が収容された八面体間隙は収縮し孤立したInBr_6^<3->のアニオンを形成する傾向にあるが、その位置が無秩序になることで、よりフラットなポテンシャルをもつ臭化物イオンの副格子を形成し、Li^+の拡散に寄与していると考えられる。さらにLi^+とイオン半径が接近したIn^<3+>は連続的に置換し固溶体Li_<1-X>In_<X/3>Brを形成する可能性を示唆した。試料の強い吸湿性のためその導電率の評価には問題も多いが、今後関連化合物の探索からよりリチウム二次電池の固体電解質に適した材料が期待できる。
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