研究概要 |
軸分子として長鎖チオール基をもつビオローゲン、環分子としてシクロデキストリンをもつ擬ロタキサンの金基板上での単分子膜作成において、電位掃引法が有用であることを見いだした。 チオール単分子膜を金基板上に作成する場合、浸積法を用いるのが一般的である。しかしながら、シクロデキストリン共存下においてチオール単分子膜を作成する場合、シクロデキストリンが金基板上に吸着してしまい、これらが障害となってチオール分子が金基板上に近づけず、結果として十分な吸着量をもつチオール単分子膜を形成できない。これ問題点を打破するために、電位掃引法を用いた。電位掃引を行う利点として、電位掃引を行うことにより金基板上に物理吸着したシクロデキストリンが脱着することが挙げられる。また、ビオローゲンチオール分子を用いる場合、ビオローゲン部位が還元され、ラジカルカチオン種となることで、シクロデキストリンとの錯形成が向上することも挙げられる。 N-(10-mercaptohexyl)-N'-(3,5-dimethoxybenzyl)bipyridinium bromide (C6V)を軸分子とし、α-シクロデキストリン存在下において、浸積法と電位掃引法の両方でロタキサン単分子膜を作成したところ、電位掃引法ではほぼ飽和吸着に近い被覆率でロタキサン単分子膜が作成できたのに対し、浸積法ではその1割程度しか被覆されていない単分子膜しか作成できなかった。興味深いことに、ロタキサン単分子膜作成条件ではC6Vとα-シクロデキストリンは約半分しか錯形成をしないにもかかわらず、ロタキサン単分子膜が得られた。これは、C6Vの還元種とα-シクロデキストリンとの錯形成能が向上したためであると考えている。
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