過渡吸収分光に対応可能なナノサイズTiO_2ゾルを作製し、ポリ酸(POM)の吸着を試みた。直径10Å程度のポリ酸H_3PW_12O_40を透析によりTiO_2ゾル相へ挿入し、TiO_2表面へのポリ酸修飾を行なった。TiO_2の粒子サイズに影響を及ぼすことなく、POM吸着TiO_2光触媒の作製法を確立した。POMのTiO_2表面の吸着量の評価は吸収スペクトルにより行った。TiO_2への紫外光355nmレーザー照射によって生成する伝導帯電子をポリ酸(POM)により捕捉させ、可視領域に吸収を有するポリ酸還元種(POM^-)を生成させた。このPOMによる電子捕捉により酸化チタンの電子正孔再結合が抑制され、捕捉ホールによる反応性が向上した。芳香族スルフィドの一電子酸化反応によって生じるラジカルカチオンの生成量が二倍程度増加した。 POM^-の励起状態からの電子移動反応を2色2レーザーフラッシュフォトリシス法によって明らかにした。TiO_2の355nmレーザー励起後に生じたPOM^-に第二の532nmレーザーを照射し、POM^-の励起状態を生成させた。POM^-の励起状態に特徴的な吸収は観測されなかったが、POM^-の励起状態からTiO_2への再電子注入およびTiO_2ホールと注入電子との再結合過程を観測した。また、メチルビオロゲン(MV^<2+>)を電子捕捉剤として添加したところ、TiO_2への電子注入を抑え、MV^+の生成が観測され、新規ポリ酸修飾TiO_2光触媒の多重励起による還元型反応プロセスを構築した。電子をPOM^-として貯蔵することに成功し、電子捕捉により生成したPOM^-の幅広い可視領域の吸収を利用した、新たな可視光応答型光触媒が発現できた。
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