研究概要 |
平成18年度は、世界最古の植物で藍藻と同種の紅藻、イタリアの高温酸性温泉に生息するシゾン(Cyanidioschyzon merolae 10DおよびCyanidium caldarium)を用いてAcetophenone誘導体や(+)-および(-)-Camphorquinoneの還元を検討したところ、Acetopllenone誘導体は(S)-アルコールに変換され、(+)-Campliorquinoneは(-)-3S-exo-hydroxycamphorを主生成物として得られた。5α-Androstane-3,17-dioneの場合は、従来の生体触媒と比較して収率良く3α-OH化合物(3α-OH/3β-OH=76/24)が優先して得られることが判明した。pH10の塩水湖に生息するラン藻(Spirulina platensis NIES-39)を生体触媒としてα-Bromo ketoneやα,α'-Dibromo ketoneに作用させたところ、前者からは臭素がOH基に変換されたα-Hydroxy ketoneが、また後者からはα-Diketone体が最初に生成し、次いで生体触媒の還元能力によってα-Hydroxy ketoneに変換されることが判った。2,6-Dibromo menthoneのようにAlkyl基を有する場合、Alkyl基の立体障害のために還元されずにDiosphenolが優先して得られることがわかった。この結果は、α-Bromo ketoneやα,α'-Dibromo ketoneを水中でマイクロウエーブを照射した結果と同じであり、生体触媒の場合の方が、太陽エネルギーを利用し、CO2の削減にも役立つ利点を持つ。両生体触媒は、強酸性や強アルカリ性条件下に生息するので、従来雑菌等の侵入のための滅菌の必要が無く、実用的な触媒であることが判った。 分担者中村は、化学的エネルギーの代わりに電気的なエネルギーの利用を考え、幅広い基質特異性を持つチチカビの脱水素酵素(粗酵素)を用い、メチルビオローゲンおよびNAD+の存在下にTrifluoroacetophenoneを電圧-0.7V、電流0.1mAで不斉還元を行なった結果、収率49%,不斉収率100%でS体のTrifluorophenylethanolが得られる新しい結果も見出した。
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