ヒト白血球の主要成分好中球を活性化させる非天然型ビルディングブロック含有ペプチドを利用した活性発現の機構を、細胞内情報伝達系の分子レベルで解明するため、7回膜貫通型受容体(GPCR)の膜貫通配列ペプチドを化学合成し、これらのリガンド(薬物)機能の調節能を調べた。 特に今回、膜ペプチド自身の受容体への結合および引き起こされる生物活性を解明した。 また、好中球上には3種のレセプター中、2つのタンパク質が発現していると報告されているが、分化培養細胞上では、詳細が研究されていない。そこで癌化した細胞HL-60上のレセプターサブタイプを特定し、正常細胞とは異なる応答の原因を調べた。 好中球活性化ペプチドのレセプターには、FPR、FPRL1、FPRL2の3種類が存在する。特に好中球上で発現しているFPRとFPRL1の配列を解析し、疎水性が多く集まる7種のペプチド配列を選択した。また、細胞に添加した際の配向を考慮し、親水性タグを配置した。また、細胞膜内での挙動を調べるため、蛍光プローブとして適当なアミノ酸残基を、蛍光性のトリプトファン残基に置換した。このようにデザインしたペプチドの合成を行った。 ペプチド合成は、迅速かつ高効率な固相合成法を利用した。膜貫通ペプチドは、疎水性かつ嵩高いアミノ酸から構成されているため、反応性に乏しく、また、ペプチドの伸長に伴い、ペプチド同士の会合性のため、合成が困難である場合が多いが、我々は、以前より膜を貫通して会合し機能するペプチドの迅速合成法に取り組んできた。また、細胞外マトリックスの疎水性配列部分の合成にも取り組んでおり、高い合成成果を修めている。これらの経験を用い、困難な合成を達成できた。得られた化合物の純度と構造は、HPLC及びMALDI=TOF MSで確認した。 生物活性は、ヒト抹消血から単離した好中球を用い、活性酸素生成能として評価した。その結果、特定の膜貫通ペプチドが、好中球の活性酸素放出能を増強させることが判明した。
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