本研究では、化学蒸着法の一種である化学気相含浸法により、高導電性機能を有した多孔質体を合成し、二次電池の高性能集電フィラーとして適用、三次元的構造を有する新しい電極構城の構築を目的とする。本年度は、基質に、安価な天然素材(綿布、脱脂綿、木材、紙)の炭素化物を用い、窒化チタンをコーティングすることで高導電性多孔体の合成を試み、合成条件と多孔質体物性、導電性特性との関係について検討した。 綿布、脱脂綿、紙解離繊維、木材は、1000℃、アルゴンガス流中で炭素化し基質(プリフォーム)とした。これらプリフォームは、綿布を除きいずれも空隙率80%以上、平均細孔径10から50μm程度を有し、二次電池用集電フィラーへ適用可能と判断した。 作製したプリフォームに、圧力パルスCVI法を用いて、本年度は1%TiCl_4-10%N_2-H_2ガス系からの850℃でのTiNの析出を検討した。なお、当該ガス系用の装置を新規自作した。 SEM観察から、膜厚0.5〜1μm程度のTINが炭素繊維もしくは炭素壁上に均一に析出していることがわかり、炭素基質とTiN薄膜との問にはクラックなどは観察されず、密着性はよいものと考えられた。本研究で得られた多孔質TiNの空隙率、つまり活物質を充填可能な空間の割合を、従来の金属箔集電体を利用した電極と比較すると、綿布炭化物を用いた場合は同程度であるが、脱脂綿、及び木材炭化物を用いた場合は大きくなることを見出した。この結果は、脱脂綿、及び木材炭化物から得た多孔質TiNを集電体として用いた方が、従来の金属箔集電体より単位体積当たりの容量の増加が期待できることを示している。又、単位体積当たりの幾何学的表面積を比較すると、多孔質TiNでは、いずれも従来電極より大きくなることがわかった。この結果は活物質と集電体の接触面積が大きくなることを示しており、電気的接触の点で有利となり、電池の内部抵抗の低下が期待できる。
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