研究概要 |
本研究では、化学蒸着法の一種である化学気相含浸(CVI)法により、高導電性機能を有した多孔質体を合成し、二次電池の高性能集電フィラーとして適用、三次元的構造を有する新しい電極構成の構築を目的とする。本年度は前年度に引き続き、基質に安価な天然素材の炭素化物を用い、TiNをコーティングすることで高導電性多孔体の合成し、合成条件と多孔質体物性、導電性特性との関係について詳細に検討し、多孔質特性と導電特性の間の関係を導いた。 綿布、脱脂綿、紙繊維、木材を、1000℃、アルゴンガス流中で炭素化し基質(プリフォーム)とした。これらプリフォームは、綿布を除きいずれも初期空隙率(ε_o)88%以上、平均細孔径10から50μm程度を有し、基質としては脱脂綿、紙繊維、木材が適当とした。 作製したプリフォームに、圧力パルスCVI法を用いて、1%TiCl_4-10%N_2-H_2ガス系からの850℃でTiNを析出させた。TiNの充填率F_<TiN>は処理時間(パルス数)に比例して増加した。パルス数10,000の処理で、残存空隙率80%以上を保持しながら、比抵抗10^<-6>Ωm以下を示し、二次電池用集電フィラーへ適用可能と判断した。モデル計算により、比抵抗はF_<TiN>に反比例的に減少し、析出相の抵抗率に比例して増加することを予想した。計算結果は実験結果によく一致した。F_<TiN>の増加には限界があるため、より抵抗の低い多孔質体を合成するには析出相の抵抗率を下げる必要がある。析出相のTi/N比は化学量論比からずれていることがわかった。TiNの抵抗率は、Ti/N比に強く影響されるため、今後、合成条件をさらに変化させ、Ti/N比の異なる析出物を被膜し導電性の向上を検討する。さらに、リチウムイオン二次電池活物質となる熱分解炭素を、合成した多孔質体に充填し、高速充放電特性の向上の可能性を判断する。
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