正極材の微細構造制御、特に電子伝導性向上を目的として添加するカーボンの構造制御の成否は、優れた電池特性を発現させる鍵となるものの一つである。従来の乾式法によるカーボン粉末の添加・混合には限界があることは周知のことであった。本研究では、カーボンカーボンナノチューブの水系コロイドの分散性は、polyethylenimine(PEI)添加によって著しく向上するという昨年度までの成果を基に、分散性に優れた水系カーボンナノチューブコロイドの作製に成功した。平成19年度は、これを用いて、LiFePO_4とカーボンナノチューブとのナノコンポジット作製に取り組んだ。作製は、水系カーボンナノチューブコロイドにLi、Fe、及びPの化合物を溶解させ、180-200℃での水熱反応、その後の不活性ガス中での加熱処理(500℃以上)というプロセスによって行った。透過電子顕微鏡(TEM)観察の結果、作製したナノコンポジットは、LiFePO_4ナノ粒子がカーボンナノチューブのネットワーク構造中に析出しているという特異な構造をもっていることがわかった。現在、このナノコンポジットのリチウムニ次電池特性評価を行っている。この結果を受けて、今後、電池特性に最適なカーボンナノチューブの量、加熱処理温度等について検討を行い、高速充放電においても高い容量を示す優れた電池特性を有する正極材の開発を目指す。また、重行して、これらの結果をまとめた論文等の成果発表も行う。
|