研究概要 |
非環状テトラピロール系らせん分子(亜鉛ビリノン)を基盤とする液晶用キラル添加剤の開発を目的として、平成18年度は、亜鉛ビリノンおよび亜鉛ビリノンニ量体のヘリシティー制御とそれらのキラルネマティック液晶誘起効果について、以下の2項目を検討した。 1.亜鉛ビリノンホモヘリシティー集積構造の構築 光学活性スペーサーによって亜鉛ビリノンを連結した二量体を合成し、そのホモヘリシティー構造の制御について検討した。スペーサーを種々検索した結果、光学活性な2,4-ジメチルペンタン-1,5-ジオキシ基やtrans-シクロヘキサンー-1,2-ジオキシ基などをスペーサーに用いることで、高いホモヘリシティー誘起を示す二量体を得ることができた。これらの化合物を室温ネマティック液晶であるMBBAに添加したところ、極めて効率的にキラルネマティック相を誘起することが明らかとなった。らせんピッチ測定からキラルネマティック液晶誘起効率を定量的に評価したところ、これら亜鉛ビリノンホモヘリシティー二量体は、MBBAに対して既知のいかなるキラル添加剤よりも大きなねじり力を示すことがわかった。 2.光学活性配位子との錯形成による亜鉛ビリノン高次キラル構造体の構築 アキラルなスペーサーを有する亜鉛ビリノンニ量体を種々合成し、光学活性配位子との錯形成によるホモヘリシティー体の構築について検討した。亜鉛ビリノンニ量体とキラルゲストとの錯形成を評価したところ、ホモヘリカル構造への自己組織化が効率的な二量体に関して、より効率的なホモヘリシティー誘起が認められた。また、合成した二量体は液晶に対する溶解性にも優れていることから、ホストーゲスト錯形成による超分子型液晶用キラル添加剤としての展開が期待される。 以上の成果は、国際会議(第10回国際有機化学京都会議)において発表し、また、2件の論文として公表予定である。
|