昨年度に確立した作製法を用いて、銅が、ナノサイズ粒子として酸化チタン薄膜全面に析出した薄膜と、大きな粒子として孤立した島状に析出した酸化チタン薄膜を作製した。これらの薄膜を500℃で焼成して、まずメチレンブルー色素の光触媒的酸化分解あるいは還元分解の実験を行った。その結果、酸化、還元のいずれの反応系においても、同じ銅粒子の担持量で比較すると、島状に析出させた場合の方が高い光触媒活性を示すことがわかった。これは、小さな銅粒子が薄膜全体に析出している場合には酸化チタン表面へ届く光の量が低下するのに対して、島状に析出した場合には酸化チタンへも十分な光が到達していることによるものであると考えられた。さらに、銅粒子が励起電子をトラップする働きをもち、粒子サイズを制御して島状に析出させた銅担持光触媒薄膜は、空気を反応溶液にパージしなくても、水中で高い光触媒活性を示す優れた光触媒であることがわかった。次に、銅を島状に析出させた銅担持光触媒薄膜を用いて、気相中でのトリクロロエレン(TCE)の光触媒分解実験を流通型で行った。その結果、銅を担持させていない場合に比べて、TCEの二酸化炭素への完全分解率が向上し、有害な副生成物の生成を抑制できることがわかった。ただし、本研究の手法で作製した薄膜では表面積が小さいためにTCEの分解処理能力が低いという問題点がわかり、より実用的な材料にするために、銅担持薄膜のスケールアップを目的とした研究を現在、展開中です。
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