本研究では、まず金属基板上で電気化学堆積法による酸化亜鉛薄膜の成長条件を詳細に検討し、その知見を基にしてSi単結晶上での酸化亜鉛成長を試みた。 まず得られる酸化亜鉛結晶粒径の電解電流密度依存性を明らかにした。ガラス上の金薄膜を電極として酸化亜鉛を成膜した場合には、電解電流密度が20-80μA/cm^2の領域で鋭い直線のエッジを有する正六角形の板状酸化亜鉛結晶粒を得た。板状粒の対角線の長さは1-5μmである。またこれより大きな電荷電流密度では径が1μm以下の微小粒が、一方より小さい電解電流密度では特定の形状を成さない極めて小さな粒が得られた。以上の結果より、電解電流密度によって得られた酸化亜鉛結晶粒の大きさを変化させうることを見出した。次にc面サファイア単結晶上にエピタキシャル成長させた(111)プラチナを電極として用い、同様の製膜を試みた。その結果、25-100μA/cm^2の電解電流密度範囲で、電気化学堆積法によって酸化亜鉛がエビタキシャル成長した。特に100μA/cm^2ではピンホールなどもほとんど確認できない連続膜を得た。また25μA/cm^2においては総通電量1.0Cで、直径2-4μm、高さ1-2μmの独立した六角柱状結晶粒が多数得られた。XRDロッキングカーブ測定より、面直方位分布は電解電流の増大につれて大きくなっていた。一方、面内XRD測定の結果、面内方位分布の大きさはおよそ5^0と大きく、また電解電流によらずほぼ一定であった。溶液濃度を変化させた場合には、亜鉛イオン濃度が0.12mol/Lまではほぼ濃度に比例して平均粒径が増大した。また1.2mol/L以上では粒径は濃度に依存せずほぼ一定であった。 以上の結果を基に(111)Si基板上への成長を試みた。その結果、多結晶酸化亜鉛薄膜を得ることに成功した。(765文字)
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