研究概要 |
本研究では、主としてこれまで高分子ナノコンポジットに使われることのなかった天然マイカ(非膨潤性層状珪酸塩)を層剥離させることで新規なナノコンポジットを調製することを目的とした。天然マイカとしてはK型セリサイト(K-SE,絹雲母)を使用した。K-SEの粉末試料は空気分級によってD_<50>:13.6μm(メディアン径),D_<10>:7.9μm,D_<90>:23.7μmの粒子径分布に調製し、使用した。アルキルアンモニウム修飾SEは高濃度(層間K^+量に対して10倍当量)のアルキルアンモニウム水溶液で90℃、4日間の処理することによって調製できた。 熱硬化性高分子の検討では、ビスフェノールA型エポキシに有機修飾SEを混合し、硬化剤として無水メチルナジン酸(NMA)、硬化触媒としてベンジルジメチルアミン(BDMA)を使用して、120〜180℃で加熱処理してコンポジットを調製した。有機修飾SEは180℃で硬化させたときに高度な層剥離状態に達した。そのナノコンポジット中の珪酸塩ナノシートは従来のナノコンポジットの数十〜数百倍高いアスペクト比を示した。 更に熱可塑性高分子の検討では、二軸混練機を使った溶融混練法によりポリアミド6(ナイロン6)/SEナノコンポジットの調製を行い、機械的特性への影響を調べた。SE添加量が2.5wt%のとき、曲げ弾性率と熱変形温度は、従来のナノコンポジットを上回る性能を示したが、十分な物性改善を示すものではなかった。それは溶融混練等のポリマープロセッシングで発生するせん断応力が、剥離するSEナノシートを不均一に破壊するため、分散の不均一化が生じたことが原因であった。高性能ポリマーナノコンポジットの創製のため、3つの因子:剥離度、アスペクト比、そして粒子分散の均一性の重要性を指摘した。
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