有機-LDH(層状複水酸化物)複合体の配向薄膜作製ルートを開発することが、本研究の目的である。 平成18年度は、炭酸型LDHを使用し、3つの合成スキームを試みた。(1)基板上に炭酸イオン型LDHの高配向性薄膜を形成し、薄膜のまま脱炭酸イオンによってアニオン交換性のLDHを合成、アニオン交換によりナノハイブリッド薄膜を合成、(2)炭酸型LDHを脱炭酸イオンし、アニオン交換後、フォルムアミドによりナノシート化し、基板上に塗布した後、乾燥させてアニオン交換型のLDHの高配向性薄膜を形成、さらにアニオン交換によりハイブリッド薄膜を作製、(3)炭酸型LDHを脱炭酸イオンし、アニオン交換により有機-LDHナノハイブリッドを合成し、これをフォルムアミドによりナノシート化し、基板上に塗布・乾燥させて薄膜を作製。いずれの方法においても、高配向な有機-LDHナノハイブリッド薄膜が得られたが、特にフォルムアミドを用いたナノシート化により、緻密で透明度の高い薄膜が得られた。 平成19年度は、薄膜作製に必要な(1)高結晶性・均一粒径のLDHの合成技術、(2)LDHの脱炭酸イオン技術、(3)LDHのナノシート化技術、の改良を行った。(1)では、ヘキサメチレンテトラミンの量を変化させて、均一沈殿法でLDHを合成することにより結晶径の制御が可能となった。(2)の脱炭酸イオン法に関しては、HCl/NaClから酢酸バッファー/NaCl溶液に変え、穏和で均一な条件での脱炭酸イオンを実現した。(3)のナノシート化に関しては、難蒸発性で、基板に対して親和性が低いフォルムアミドの代わりに、水で膨潤しナノシート化するLDH複合体(酢酸アニオンを層間に含むLDH)を開発した。水の適度な蒸発性と基板との親和性により、容易に配向薄膜が得られ、さらに基板を要しない自立膜も作製できた。
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