研究概要 |
本研究はデンドリマー(樹木状多分岐高分子)のトポジカルに特異的な分子構造に,液晶の自己組織性を付与した「液晶性デンドリマー」を合成し,磁場・光・電場などの外場を複合的に印加して,高次構造を3次元的に精密制御することにより,従来にない電子および光学的機能を有する薄膜材料及びその成形法を開発することを目的としている。この外場応答性の高い液晶性デンドリマーを構造制御の「コマンド分子」として基板界面やバルクを精密に構造制御する方法を構築,光メモリー,ホログラム,回折格子,有機半導体などの薄膜材料の開発およびそれらの成膜法について検討した。 ポリプロピレンイミンデンドリマー末端にアゾベンゼン基およびキャリア輸送性を示すフェニルナフタレン誘導体をメソゲンとして付加したデンドリマー液晶(LCD-Azo, LCD-PN)を合成した。いずれも室温から100℃以上の広い温度範囲に渡って熱力学的に安定なスメクチック液晶性を付与することに成功した。これらのデンドリマー液晶について偏光顕微鏡とX線構造解析から,LCD-AzoはスメクチックA液晶,LCD-PNはスメクチックA,スメクチックB,スメクチックE液晶相を示すことを明らかにした。 アゾベンゼンを有するLCD-Azoは光異性化により,比較的容易に表面レリーフを形成できることを見出し,回折格子やホログラム材料に応用できることを明らかにした。さらに,光と磁場を利用することにより,分子が基板面に垂直・水平・傾斜配向した薄膜の形成に成功した。フェニルナフタレンを含むLCD-PNにおいては10^<-3>cm^2/Vsという低分子液晶と同等のキャリア移動度を室温で達成することに成功した。 以上の知見を基に,光と磁場を利用した精密構造制御法の構築,それを利用した光学フィルム,高いキャリア移動度を有する有機半導体の開発が期待できる。
|