高圧の超臨界二酸化炭素雰囲気下で高分子フィルム試料を延伸して、その延伸過程を可視化観察可能な超臨界延伸装置を試作した。また、延伸過程における応力測定も可能にさせて、さらにはフィルム試料へのレーザー光の照射により延伸過程中の複屈折測定も可能になるように超臨界延伸装置の改良を試みた。このように試作された超臨界延伸装置を用いて、高密度ポリエチレン試料の超臨界延伸を試みた。その結果、低圧ではフィブリル構造が得られたが、低温・高圧下では太さが数百nmのナノファイバーが得られ、さらに高温・高圧ではフィブリル内に延伸方向に対して垂直に長い厚さ数十μmの板状結晶が形成されていることが見出された。板状構造が得られる温度・圧力下における延伸過程を可視化観察したところ、ネッキング前にコントラストが現れ、その後ネッキングに伴い急激に試料の透過性が低下した。SEM観察から、ネッキング前に延伸方向に対して垂直方向に細長い楕円形の微細な空孔が形成され、ネッキング時に空孔がフィブリルの成長方向に対して垂直方向へ拡大することが明らかにされた。また、この構造を有する試料のDSC測定と広角X線回折測定を行ったところ、未配向試料に比べて融点が約10℃も上昇して、0.8という高い配向係数を示したことから、流動中に結晶鎖がほどけて新たに高配向度の結晶が発現したことが示唆された。以上の結果から、ラメラスタックの破壊に伴い形成された楕円形の空孔がフィブリルの成長方向に対して垂直方向へ拡大することで板状結晶が形成されたことが明らかになった。
|