研究概要 |
ポリアクリル酸ゲルの1,8-diazabicyclo[5,4,0]undec-7-ene塩ゲル(DAA)とアルキルアミンのアミド化反応は、亜リン酸トリフェニル存在下で定量的に進行し、感温性のポリ(N-アルキルアクリルアミド)(PNAA)が生成する。また、この反応を途中で止めると未反応のDAAのコアとPNAAのシェル層から成るDAA-PNAAのコアーシェル型ゲルが得られる。さらにこのゲルに別のアルキルアミンを反応させると2層の異なるPNAAから成る新規のコアーシェル型ゲル(二層ゲル)が合成できることを明らかにした。この2つのPNAA層の組み合わせとして物性値の近いアルキル基がイソプロピル基のPNIPA(LCST:32℃)とかプロピル基のPNNPA(LCST:21℃)に着目し、直径約4mmの円柱状のPNIPA-PNNPAの二層ゲルを合成した。合成した二層ゲルは軸対称であるため、水中でPNIPAが膨潤、PNNPAが収縮している21〜32℃の間でも、両者が膨潤している21℃以下の温度でも形状は大きく変わらなかった。さらに軸対称性を持たない二層ゲルの合成法あるいは作成法についても検討を行った。例えば、円柱状ゲルを軸方向に2つに切断したかまぼこ状二層ゲルは、21℃以下の温度では2層とも膨潤し直線状であるが、21〜32℃の間ではPNNPAのみ収縮しPNNPA側に大きく屈曲した。さらにPNIPAの下部臨界溶液温度(LCST)以上では両者とも収縮し直線状に戻った。この形状の変化は温度変化に対応して可逆的に起こるが、変形に要する時間は数時間以上かかり、遅すぎて実用的でないことが判明した。ゲルの変形の高速化が今後に残されている課題である。高速化の一貫として、PNIPAゲルの多孔質化について検討し、その成果の一部をJ.Appl.Polym.Sci.に投稿した。
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