両末端にカルボキシル基を有するポリエチレンブチレンの特性評価を、NMR、GPC、中性子小角散乱、FT-IR測定で行ない、数平均分子量が2千、末端官能基数がほぼ2であることを明らかにし、ステアリルアミンとの会合系試料を調整した。融解混練で組成比の異なる試料を作成し、分光および熱・レオロジー測定で検討した。カルボキシル基とアミン基が当量となる組成では、NMR、FT-IR、X線回折、DSCすべての測定結果から単独で存在しているステアリルアミンがほとんどないこと、一方粘弾性測定からは粘度が上昇するのみで弾性体とならないことが明らかになった。ステアリルアミンを当量以上に加えた試料では室温では弾性体、高温では粘弾性液体となり、この変化は可逆的であった。DSCでは40℃付近に幅広な吸熱ピークが見られ、ステアリルアミン単独の融解ピークよりかなり低いこと、X線回折でもステアリル基の長周期相当の散乱角にブロードなピークが存在することから過剰なステアリルアミンも単独では存在しないことが明らかになった。中性子小角散乱実験から、同様のブロードなピークが比較実験で行なったステアリン酸アルミでもみられ、その存在が系の弾性的挙動を支配することが明らかになったので、両者において弾性を支えるのはステアリル基の会合体であることが明らかになった。 アミノ基をアミド基に変えた場合、融点が若干上がるものの、ほぼ同様な挙動を示すこと、結晶性低分子として検討した他の官能基を有するモデルアルカンはポリエチレン類との相溶せいがあまり良くないが、それ自身非常に興味深い結晶を形成することなどを明らかにした。 最後に形成した弾性体の郷土について述べる。動的粘弾性の平坦弾性率は0.1MPa程度であまり大きくない。また大変形を加えると塑性的な振る舞いを示し、ひずみが10%ていどから構造の破壊が起きることが明らかになった。比較のために行なったカルボキシル基を多価金属イオンで中和した計でも同程度であり、両者に大きな凝集力の差がないことがわかった。
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