高磁場高周波ESR装置の開発と応用研究について、以下のような成果が得られた。 1.装置の高速化のために、140MHz広帯域アンプを購入したが、このアンプとマイクロ波の検波器ダイオードとのインピーダンス(200オーム)のマッチングを行った。この結果、信号のロスがなくなると共に、高周波ESR装置に5nsの時間分解能が実現できた。 2.これを用いて、溶液中と低温固相中で、励起三重項-ラジカル系の励起多重項状態の高速信号を観測し、励起状態ダイナミクスとスピン緩和解析のデータを得た。 3.これまで感度の問題で観測が困難であった励起三重項-ラジカル系の励起多重項状態の熱分布信号を初めて観測した。これにより分布数が恩出で決まることから、スペクトルの解析が容易になり、励起多重項間のエネルギー差、交換相互作用Jを正確に評価することが出来た。 4.3のエネルギー差Jの解析により、より複雑にスピン分極した状態のスペクトルも解析可能になり、励起状態ダイナミクスやスピン緩和速度を決定することが出来た。 5.これらの観測。解析を2つのラジカル異性体を用いて行うことにより、励起ダイナミクスなどを決める重要因子の抽出に成功した。
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