研究概要 |
有機半導体を用いた電子素子実用化へ向けて盛んに研究が行われている。最近ではアモルファスシリコンに匹敵する性能を有する有機半導体材料が開発され、印刷プロセスによる電子デバイスの作製が真剣に検討されている。現在、有機半導体層の結晶性の向上と均質化が求められており、有機半導体薄膜の結晶成長初期過程の解明は極めて重要である。 本研究では、真空蒸着法による有機半導体薄膜の成長初期過程の解明を目的とし、微少角入射(GIXD)In-planeX線回折により有機半導体薄膜の面内構造を調査し、その膜厚依存性を解明することを目的とし実験を行った。今回実験に用いた有機半導体試料は、DS-2Tその誘導体である。これらの有機半導体は、大気中で安定したトランジスタ特性を示す有機半導体材料として注目されている。実験は、SPring-8のBL46XU,ATX-GSORを使い厚さ数モノレーヤーの超薄膜からの微少角入射条件でIn-planeX線回折を測定し、実験室(Rigaku,ATX-G)で測定した100nm程度の比較的厚い膜のデータと比較した。SiO_2ウエハ上に蒸着した平均膜厚0.2〜100nmのIn-plane GIXDパタンを得ることに成功し、数モノレーヤーの超薄膜とより厚い膜とを比較すると、回折ピークの位置が膜厚に依存して異なり、膜厚の増加と共に分子間のパッキングが変化することが明らかとなった。さらに、官能基の違いによって膜厚に依存する構造変化に違いが見られることを見いだした。さらに初期層の構造の違いがトランジスタ特性に及ぼす効果を検討した。
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