18年度までに、PBとオクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(ODTA)による有機-無機複合LB膜試料にGOxを吸着した数分子層の試料は、グルコースセンサとして動作することを確認した。しかしながら、超薄膜性を原因とする信号強度の微弱さ、および複数回測定における再現性の低下などがみられ、センシング機能としての重要な要素に問題点があることが分かった。そこで本研究では、GOx吸着条件の最適化や導電性LB膜の累積などによって、センシング特性を最大限に引き出す為の具体的な手法の確立を実現すると共に、それらメカニズムの解明を行った。 1.pH依存性によるGOx吸着条件の最適化 GOxの吸着は静電相互作用によるため、溶液のpH値は吸着プロセスに大きく関与する。そこでGOx吸着量を最大にするpH値をさぐるため、pH値をコントロールしたGOx水溶液中で試料を作成した。その結果、pH4の吸着条件が最も多くのGOxを固定化することが分かった。さらにアンペロメトリー測定を行ったところ、この試料は従来の試料に比べ約4倍のグルコース応答電流密度が得られ、センサ測定感度を大きく向上させることに成功した。以上の現象は、水素イオン濃度とGOx等電点に基づくモデルで説明可能であることが分かった。 2.導電性LB膜導入によるグルコースセンサ特性の向上 ODTA/PB/GOx LB膜上に導電性LB膜を累積することで、アンペロメトリー測定によって生じるGOxやPBの脱離を防ぎ、複数回測定における再現性の確保を試みた。その結果、グルコース応答電流密度の2倍増や、計測ノイズの劇的な減少、グルコース濃度に対する電流密度の直線性の向上など、センサ特性において大きな成果が得られた。このことは他のアンペロメトリー型バイオセンサに対する導電性LB膜被覆の有用性を示唆している。
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