研究概要 |
原子層状構造を有するp形透明導電性デラフォサイト型銅酸化物において,Cu^+イオン面内の正孔移動を妨げないようにIII族イオンサイトに希土類およびアクセプタを添加し,発光及び導電特性の制御性を調べた。具体的には,固相反応法により希土類及びアクセプタ不純物を添加したCuYO_2及びCuLaO_2試料の作製を試みた。Eu, Tb及びTm希土類添加試料では,III族サイトの平均イオン半径に対応した格子定数変化から,添加希土類がIII族サイトを置換していると考えられる。Ce希土類添加では異相が出現し,格子定数変化は観られなかった。CuLaO_2試料では不純物添加の有無にかかわらず,CuLa_2O_4等の僅かな異相が混在した。Cu(La_<1-〜χ>Eu_χ)O_2及びCu(La_<1-χTb_χ)O_2で現れるEu^<3+>及びTb^<3+>のf-f遷移発光の強度は添加濃度10%で最大となり,Cu(Y_<1-χ>Eu_χ)O_2及びCu(Y_<1-χ>Tb_χ)O_2の場合の8%より高濃度であった。これはLa^<3+>のイオンサイズがY^<3+>に比べて大きいためと思われる。Cu(La_<1-χ>Tm_χ)O_2で現れるTm^<3+>のf-f遷移発光の強度は,Eu及びTb添加の場合とより低濃度の0.5%で最大となり,Cu(Y_<1-χ>Tm_χ)O_2の場合と同様であった。これはTm^<3+>の非発光交差緩和過程の関与の可能性がある。Ca添加CuYO_2の場合と異なり,Ca及びSr添加CuLaO_2では導電性の向上は観られなかった。この違いはCuLa_2O_4等の異相が関連しているのかもしれない。CuYO_2ではCaと希土類の同時添加では希土類イオンのf-f遷移発光の出現に加えて,導電性も向上し,導電性酸化物の可能性が明かとなった。硝酸金属を原料とした溶液法により希土類添加CuYO_2薄膜及びCa添加CuYO_2薄膜の作製も試み,それぞれの薄膜で希土類イオンのf-f遷移による発光の出現及び導電性の向上を観測した。
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