I(intrinsic)層として働く共蒸着膜をp、n層でサンドイッチした構造のP-I-N接合有機固体太陽電池の性能向上を目指した研究を行い、以下の結果を得た。 (1)共蒸着膜の発生できる開放端電圧の最大値が、ドナー性分子(p型有機半導体)のHOMOレベルとアクセプター性分子(n型有機半導体)のLUMOレベルの差(有効バンドギャップ)で決まることを実証した。それに基づき、p型有機半導体としてこれまでのフタロシアニンに代えて、ルブレン、ナフタレンチオフェン誘導体を用いることで有効バンドギャップを広げ、これまでに無い0.8Vを越える開放端電圧を観測した。 (2)H_2またはN_2の1気圧ガス下で単結晶析出昇華精製し、させることで、有機半導体の純度を飛躍的に高める新技術を確立した。得られた高純度化サンプルでP-I-Nセルを作製し、変換効率をこれまでの2.5%から3%に向上させることに成功した。 (3)短絡光電流の決定因子である有機半導体の励起子拡散距離を精確に求める方法を確立した。C_<60>で1.5nm、最大のテトラセンで20nmの非常に小さな値であることが分かった。 (4)1000時間に及ぶ長期動作試験を行い、初期劣化として空気から侵入した酸素分子がトラップとして働くことによる数時間内の初期劣化モードがあり、その初期劣化は、窒素雰囲気下、高真空中でほぼ抑制できるが分かった。その結果、有機pn接合セルにおいて100時間連続動作で劣化10%以下の安定動作を確認した。また、数百時間の長期劣化モードも存在し、共蒸着混合層の何らかの変化によることが示唆された。
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