直流低電圧駆動エレクトロルミネッセンス素子を実現することを目的に、ドナー・アクセプタ対を添加した硫化亜鉛蛍光体および硫化亜鉛薄膜の作製と特性評価を行った。ドナー・アクセプタ不純物には、従来から知られている銅・金・銀・アルミニウム・塩素に加え、ガリウム・インジウム、フッ素、砒素、リン、イリジウムについて検討し、これらの蛍光体特性を明らかにした。硫化亜鉛にキャリヤ注入する際、電子注入は比較的容易であるが、ホール注入が困難である。これは、硫化亜鉛の価電子帯が深いのに加え、ホール注入性の材料を薄膜化する際に高温プロセスが必要であるために、積層薄膜デバイスを作製する際に硫化亜鉛薄膜と熱的干渉が生じてしまうためである。そこで、新たに有機材料との積層デバイスを考案し、多結晶硫化亜鉛薄膜へのキャリヤ注入素子の作製に成功した。 また、硫化亜鉛蛍光体の作製において、結晶構造の転移・結晶欠陥の導入の重要性との関連について調べるとともに、アルカリ土類金属を共添加した混晶構造を有する蛍光体の作製を行い、バンドギャップの調整により発光波長の短波長化を達成した。これらの結果を基に、高効率キャリヤ注入硫化亜鉛薄膜発光素子実現の可能性と、今後の課題を明確にした。特に、イオン半径の大きな材料を混晶構造に導入することで結晶粒界や結晶中に欠陥が導入されることが高輝度発光の可能性につながる可能性が知らされた。
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