化合物半導体をベースにした、熱電材料としては新しい材料を使用する。具体的には、インジウムアンチモンとインジウムヒ素を基盤材料とし、混晶化による熱伝導率の低減、界面を制御した超格子構造導入による熱伝導率の低減および出力因子の増大を目指す。超格子構造の作製には極めて精細な制御が要求され、以下の目標を目的とした。 1)ミクロスコピック構造制御による熱伝導率の低減、2)ミクロスコピック制御による熱起電力の増大と電気抵抗率の低減(・インジウムヒ素アンチモン混晶半導体の作製、・歪超格子構造の導入、・格子整合系超格子の導入) H18年度の研究では、サファイア基板上でのインジウムアンチモンおよびインジウムヒ素薄膜の作製に重点を置いた。上記の研究を実施している段階で、インジウムアンチモン系薄膜はサファイア基板に対して濡れ性が極めて悪く、薄膜の形成が困難であることが判明した。これ以降、バッファ層の導入を検討してきた。具体的には、濡れ性のよいインジウムヒ素をバッファ層として試みたところ、良質のインジウムアンチモン薄膜の作製に成功した。電子移動度の最高値は20000cm2/Vsを超えた。この値は、サファイア基板上インジウムアンチモン薄膜としてはトップデータである。熱電変換素子として薄膜を利用する場合、基板は完全非導電性のものを使用する必要があるため、例えば、ガリウムヒ素などを用いることが出来ないことに注意する必要がある。
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