1.水面上単分子膜に対する局所レーザー加熱により初期化され、ブリュースター角顕微鏡の視野内に成長する単一の非平衡方向性成長ドメインは一般に高密度の樹枝状ドメインを形成し、主として2種類の分岐構造に分類されることが見出された。1つはフラクタル状のドメイン構造であり、2番目は主枝に対して一方の副枝が選択的に成長する、非対称な樹枝状成長ドメインである。後者の副枝成長における対称性の破れは副枝の成長方向に隣接する他の樹枝状結晶の成長方向ならびに速度と密接な相関を有することが分かった。 2.さらに樹枝状成長はしばしば、隣接するドメインの接近によりトリガーされ、多様な成長界面不安定性を示すことが見出された。この成長界面不安定性の結果として、湾曲したドメイン形状の過渡的成長や波状ドメイン境界の成長に代表されるような、相対するドメイン間での成長方向変調現象が見出された。 3.以上の結果から、マランゴニー流動に基づいた非平衡成長ドメインの形成過程において観察される、非平衡方向性成長ドメインの対称性の破れや成長界面不安定性は、これらの樹枝状成長ドメインが高密度で成長し、かつ、このような樹枝状ドメインが複数、同時に成長するため、過飽和したLE相中の両親媒性分子の競合的な捕獲現象が生じること、さらにドメインを構成する水面上単分子膜分子間での相対的な配向方向に依存する静電反発相互作用が本質的な要因であると考えられる。すなわち、このような相対するドメイン間での分子の競合的捕獲、ならびにドメイン境界間での静電反発相互作用がマランゴニー流動に起因する非平衡樹枝状ドメインの成長率に大きな影響を与え、変調ドメインパターンを生じるということが明らかになった。
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