研究概要 |
今年度は本研究課題の最終年度に当たり,従来の延長としてのInP表面構造状態図作成,ナノワイヤ形状に関する研究を行うと共に,表面状態図計算手法の適用範囲の拡大(ドーピング過程),モンテカルロ法との併用による形成過程への展開(薄膜,ナノ構造形成過程)について検討を行った。主要な研究テーマ別の概要ならびに実績は以下の通りである。 表面状態図計算のドーピング機構解明への拡張:GaAs(111)A表面でのSiドーピングにおけるp,n制御と成長条件の関係を,表面状態図の観点から検討し,低As圧でのp形化,高As圧でのn形化を定量的に予測することに成功した。これにより本計算手法が,デバイス作製指針への知見を与える手法として有用であることを明らかにした。 表面状態図計算の薄膜形成過程解明への展開:4H-SiC(11-20)基板上Al薄膜形成と成長条件との関係を,表面状態図の観点から検討し,その知見に基づきモンテカルロシミュレーションを行った結果,N過剰雰囲気で2H-AINが,Al過剰雰囲気で4H-AINが形成されることを明らかにした。これは,N原子とAl原子の吸着・脱離,マイグレーションにおける振る舞いの違いに起因しており,実験結果とも定性的に一致した。 表面状態図計算のナノ構造形成過程解明への展開:GaAs(111)基板に格子拘束されたInAs(111)表面を対象に表面状態図計算を行い,界面ひずみにより表面構造の安定領域が変化すること,特にIn表面空孔をもつ構造がナノ構造である積層欠陥四面体形成に関連する可能性があることを明らかにした。
|