研究概要 |
光触媒である酸化チタンは,光電変換のほかにそれ自身に電解液中のリチウムイオンを取り込むことで蓄電もでき,単体で「光蓄電池」の電極として動作することが知られている.しかし,酸化チタン自身によって生ずる光起電力が小さいため,リチウムイオンの十分な駆動力が得られず,光蓄電電荷量が小さいことが問題となっている. これまでの研究により,酸化チタン表面の酸素欠損が有効な低エネルギー蓄電サイトとして働くことが分かっている.そこで,直流マグネトロンスパッタリング法を用いて自己組織化によって生じた表面積の大きな220配向柱状結晶薄膜を作製し、水素プラズマ還元処理によって表面に酸素欠損を生成し,電荷移動特性と光蓄電性への影響を調べた. XRDによると,プラズマ処理によってアナターゼ型の220のピークが減少しTiOのピークが生じたことから酸素欠損が生成されていることが確認できた.しかし、プラズマ処理によって光起電力は減少し,光蓄電電荷量は向上しなかった.交流インピーダンス測定の結果、プラズマ処理を施した試料では電気二重層容量の増大が見られ,実効的な表面積が増大していることが分かった.また,光に対する応答速度も遅くなった.以上の結果は、表面付近に生成された酸素欠損は蓄電サイトとして働くものの,結晶内部にまで酸素欠損が生じ,それらが再結合中心として働くため,結果的に蓄電電荷量が減少したことを示唆している. しかし、プラズマの照射条件によっては、光起電力の減少に反して光蓄電電荷量が向上した.この現象は必ず膜厚の減少を伴っていることから,ブラズマエッチングにより表面付近に新規な蓄電サイトが生成されたためと考えられるが、どのような機構が寄与しているのか今後調べる必要がある.
|