研究概要 |
本年度は走査型全反射蛍光顕微鏡装置の試作と性能検証を行った. 試作装置では,全反射照明を行う励起光学系に,アキシコンプリズムペアを用いて,透過光の発生を抑制しつつ対物レンズの入射瞳の中心部分に光が入射しないように,円環状の強度分布をもつ光を発生させるよう工夫を行った.これにより,遮蔽板を用いる従来法に比べ,光の利用効率を大幅に高めることができた.その結果,2光子励起蛍光法の利用に十分な光量を確保することができた.この円環状の強度分布をもつ光を対物レンズの入射瞳に導入し,ガラス基板表面にエバネッセント場として局在するスポットを形成させる光学系を構成した.検出系には,迷光を除去する効果を期待し,コンフォーカル系を構成するオプションを用意した.これは,検出器への導入部に設ける光ファイバーのコア径を,いくつかの大きさから選択できるようにすることで実現した.検出器には,微弱蛍光を捉えるために,量子効率の高いアバランシェフォトダイオード(APD)を用い,マルチチャンネルスケーラーで光子を計数する系を構成した. 続いて,試作した装置の性能検証として,蛍光ラテックス微小球のイメージングを行った.ノンコンフォーカル系を用いて,集光スポットに比べ十分小さい微小球(直径200nm程度)を測定することにより,装置の点像分布関数を確認したところ,点像分布関数が2つのピークから形成され,それぞれがおよそ400nm離れていることを確認した.この特徴は,理論計算に一致していた.他に,コンフォーカル系を用いて,同様に理論計算と一致する結果を得た. 次年度の研究において,点像分布関数をシングルピークに整形し,装置の像特性最適化を試みる.
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