研究概要 |
本年度は, 走査型全反射蛍光顕微鏡の照明系にビーム走査方式を導入し, 観察領域の拡大と走査速度の向上を試みた. 照明光が輪帯状に分布しているため, 入射瞳の結像面に走査ミラーを配置する光学系を用いる必要があり, テレセントリック光学系で対物レンズの瞳面を結像し, ここに走査ミラーを配置した. 試作した光学系では, 50μmの範囲を走査するために求められるミラーの傾きは±0.3度程度であったため, 収差による像特性劣化は無視できる範囲に収まることが, 理論計算で確認できた. 実際に, 2次元走査の速い走査軸には走査ミラーを用い, 遅い走査軸には走査ステージを用いて, ラテックス微小球を観察し, 両軸とも走査ステージを用いた場合と比較した結果, 像特性が劣化しないことを確認した. なお, 128点x128点の画像取得に要する時間は2分程度であった. また, コンフォーカル検出光学系を用いた場合に生じる, 検出器の大きさと空間分解能と像の明るさについて, 実験的な検証を行った. 実験では, 励起光スポットと光学的に共役な位置に, コア径の異なる光ファイバーのコアを順次配置して, これらの光ファイバーを通ってアバランシェフォトダイオードへ導かれる蛍光を計数した. これにより実効的な検出器の大きさを変化させながら, 蛍光微小球(直径200nm)を観察した. その結果, 検出器の大きさが蛍光波長と対物レンズの開口数で決まるエアリーディスクの直径と同程度になるまでは, 蛍光像の大きさはほとんど変化無く, 明るさが増し, エアリーディスクの直径の2倍程度までは, 明るさはほぼ変わらず, 大きさが1.6倍程度までしだいに大きくなり, それ以上ではほとんど変化しないという結果を得た. さらに, 表面プラズモンを利用した蛍光増強についても検討を行い, アキシコン素子とフーリエ変換レンズで生成した輪帯は, 増強効果をもたらすのに十分細いことを確認した.
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