研究概要 |
本研究課題では,ナノスケールにおける熱エネルギー⇔電気エネルギー変換過程を明らかにするため,新たに『ナノコンタクト型熱電性能評価装置』を構築し,これを用いてナノスケールにおけるエネルギー変換過程がバルクの場合とどのように異なるかを実験的に明らかにすることが目的である。平成18年度は下記の研究実績と成果を得たので報告する。 ●ナノコンタクト型熱電性能評価装置の構築 熱電材料表面に探針をナノスケールで接触させ,このコンタクト部の一次・二次微分コンダクタンスを測定し,局所電子状態密度とナノスケールでの熱電性能を測定するシステムの構築を行った。システムは,電気計測部とクライオスタット部に分けて構築中である。電気計測部では,テスト試料の点接触型ダイオードの微分コンダクタンスの室温での測定が可能となり,現在LabVIEWへのプログラム移植を試みている。クライオスタット部は,ベローズを用いた高真空中での探針駆動システムの設計が終了し,実際の装置を組み立てている。室温での動作は確認できたが,極低温での駆動テストと実際の測定を平成19年度に行う予定である。 ●ビスマス-アンチモン合金(Bi-Sb合金)系熱電材料の合成と熱電物性 上記システムの評価・調整用の試料として,室温以下の低温で熱電性能が大きい材料として知られているBi-Sb合金とその関連物質に関する研究を行った。Bi-Sb合金はSeのドープにより伝導電子密度が増加するが,それに伴う熱電物性の変化が単純な自由電子モデルで取り扱うことが可能であることを示した。さらに,直径50マイクロメートル長さ数ミリの多数のビスマスワイヤーをガラステンプレート内に埋め込んだマイクロワイヤーアレイの熱電性能が,テンプレート内での結晶配向に強く依存することを明らかにした。これらの成果を第25回熱電国際会議で発表した。
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