気泡ダイアミクス制御によりソノゲミカル反応装置を可制御かつ高効率なものとするために、超音波化学反応をパルス照射により液高を変えて行い、液高とデューティ比の最適化を図ることを基本的な研究日的とする。今年度は、気泡空間配置と音場の最適化により超音波化学反応装置を可制御かつ高効率なものとするために、超音波化学反応をパルス照射により行った。ここで超音波化学反応としてKI(ヨウ化カリウム)水溶液の酸化反応(I-の酸化によりI2が生じ、過剰なI-の下でI-とI2との反応によりI3-が生じる反応)を行った。I3-の吸光度測定によりソノケミカル反応効率SE(投入エネルギー当たりの反応モル、次式) SE={(吸光度)×(液の体積)}/{(吸光度係数)×(照射時間)×(超音波パワー)}を見積り、連続波照射の場合の反応効率と比較検討した。キャビテーション気泡由来の超音波パワーはカロリメトリーにより決定した。超音波の駆動周波数は152kHzである。パルス波の条件はnサイクル照射とnサイクル休止の繰り返し(n=100)とした。液体積を変えて連続波照射とパルス照射を行い、SE値をそれぞれ見積った。さらに連続波照射時のSE値とパルス波照射時のSE値の比を計算した。連続波、パルス波それぞれSE値は、液体積が増加するにつれ減少することがわかった。ただし液量が少ない場合、過剰な音圧振幅により液面が揺れて定在波が安定しないことに起因して反応効率が低下することが明らかになった。SE比については、液体積が3dm-3のとき最も大きいことが判明した。液体積が3dm-3のときの音響化学発光像を撮影し検討したところ、パルス照射時の方が、液面近傍及び中心部を含めて発光している領域が広いことがわかった。このようにパルス照射により連続波照射と比べて高い反応効率および広い反応領域が得られ、高効率化の指針を得た。
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