研究概要 |
当該研究について,当初の本年度研究実施計画は(1)周期的ポテンシャル問題に対する積分方程式法,(2)周期的男性問題に対する境界要素法,の2つであった.これに対し,本年度の研究で下記の3項目の業績をあげた.下記の1,2が計画(2)に,3が計画(1)に対応する成果である. 1.周期的粘性流(Stokes流)問題に対する基本解法(代用電荷法)の拡張 周期的粘性流(Stokes流)問題は周期的構造物内における流体解析への応用などにおいて重要であるが,従来の基本解法(代用電荷法)では計算が困難であった.これに対し緒方は,基本解法の近似解に用いる基本解として,Stokes流方程式の周期的基本解,すなわち,周期的な格子点上に一様に働く点荷重により誘起される流れの1次結合により近似解を与える方法を提案した.この方法は数値実験により有効性が確かめられた.この業績に関する論文が本年度Journal of Computational and Applied Mathematicsより2本発表された. 2.周期的弾性問題に対する基本解法(代用電荷法)の拡張 周期的弾性問題は鉄筋コンクリートなど周期的構造物の構造解析への応用などにおいて重要であるが,従来の基本解法(代用電荷法)では計算が困難であった.これに対し緒方は,基本解法の近似解に用いる基本解として,弾性方程式の周期的基本解,すなわち,周期的な格子点上に一様に働く点荷重により誘起されるひずみの1次結合により近似解を与える方法を提案した.この方法は数値実験により有効性が確かめられた.この研究成果は本年度,国際会議ICNAAM2006にて発表され,同会議proceedingsに論文が投稿された. 3.周期的ポテンシャル問題に対する境界要素法の拡張 周期的ポテンシャル問題は,周期的構造物内におけるポテンシャル流,静電場解析において重要である.これに対し,緒方は以前基本解法(代用電荷法)の拡張を提案したが,複雑な形状の問題に対してこの基本解法は有効でない.そこで,従来ポテンシャル問題解析に用いられている境界要素法に着目し,これの周期的問題への拡張を提案した.これは,境界要素法の要である境界積分方程式で用いる基本解として,Laplace作用素の周期的基本解(従来の基本解を周期関数化したもの)を用いて得られる.簡単な静電場問題に対してはその有効性が数値的に確認された.その研究結果は計算科学研究ステーション研究集会にて発表された.現在,キャビティ流れの解析などより複雑な問題への適用が課題として残され,目下研究中である.
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