研究概要 |
本研究は,宇宙工学,ロボット工学及びナノ技術という重要な工学分野からの問題を取りあげ,力学系理論を応用して,低コストで地球から月あるいは他の惑星へ飛行する宇宙ロケットの軌道を設計し,エネルギー消費の低い2足歩行ロボット,高精度の測定が可能な原子間力顕微鏡の機構を提案することを目的とする.本年度,以下の研究を行った. 1 宇宙ロケットの軌道設計 基礎技術となる多自由度ハミルトン系のホモ/ヘテロクリニック構造の理論解析法および数値計算法に対して,当初計画してはいなかった革新的な成果が得られた.次年度以降これらの手法を用いて,地球から月あるいは他の惑星へ飛行する宇宙ロケットのモデルである制限3体問題および太陽の影響を考慮した制限4体問題のホモ/ヘテロクリニック構造を解析し,宇宙ロケットのより低コストの遷移軌道の設計法を確立する,なお,その数値計算法を,地球上の大気の流れを理解する上でも重要である球面上の渦点多体問題へ適用し,非常に複雑な状況でも十分適用可能であり,有効であることを確認した, 2 2足歩行ロボット 当初の計画をさらに発展させ,本科学研究費交付期間中における実機での実現を目指して,低コストでより安定な歩行パターン設計の技術の基礎理論を確立した.次年度以降,本理論をコンパスモデル,胴体をもつロボットの歩行モデルへと適用し,実機への実装へと発展させる予定である. 3 原子問力顕微鏡 (1)試料と衝突するタッピング・モードにおいて,試料表面に非常に接近した状態で振動するマイクロ・カンチレバーの動的挙動を理論解析し,さまざまな分岐現象が起こり,カオス現象が発生することを明らかにした. (2)カオス制御の方法を用いてマイクロ・カンチレバーの振動を制御し,試料表面の測定を行う原子間力顕微鏡の機構を提案した.
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