平成19年度は、前年度に開発した分子動力学法とモンテカルロ法の統合シミュレーションのプログラムを用いて、電気めっきにおける添加剤の効果を解析した。溶液は硝酸銀水溶液、電極は銀とし、溶液中に抑制効果をもつ添加剤を導入した。添加剤は球状とし、その作用範囲内にある電極表面での析出は棄却されるとした。添加の作用範囲、および添加剤と電極との相互作用の強さを系統的に変えてシミュレーションを行い、表面構造への影響を観察した。その結果、添加剤を入れたすべての場合において、表面は無添加剤の場合に比べて平滑化された。平滑効果は作用範囲が大きく、添加剤と電極との相互作用が強いほど顕著に表れることがわかった。ただし、添加剤が表面に強く吸着する場合は、金属析出に伴い添加剤が皮膜内部に取り込まれ、表面を粗くする場合も見られた。よって、添加剤と電極との間には最適な相互作用が存在すると考えられる。また、初期表面に溝がある場合には、添加剤の効果により膜厚が均一化され、埋め込み性がよくなる様子も確認された。 また、Solid-by-Solid(SBS)モデルによるLSI銅微細配線作成の研究においては、埋め込み性に対する塩化物イオンの効果を検討した。SBSモデルに抑制剤、促進剤、平滑剤、塩化物イオンの4種類を添加剤として導入し、抑制剤、促進剤の電極への吸着は表面に特異吸着した塩化物イオンを媒介として起こるとし、塩化物イオンと促進剤との結合は抑制剤との結合よりも強いとした。このモデルを用いてモンテカルロシミュレーションを行った結果、抑制剤が孔上部の成長を阻害し、促進剤が孔内部に分布して底部の成長を促進する、良好な埋め込みが実現できることが分かった。
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