(A)自己調節と確率共鳴--閾値系の数理単純な閾値系を特徴付ける重要なパラメタとして、閾値それ自体やノイズ強度(以下では温度と呼ぶ)がある。自己調節のメカニズムをこれらの量のそれぞれ、及び同時に働かせ、その結果を相互情報量やsignal-to-noise ratio(SNR)で定量的に評価した。またゆっくりと時間変化する外部入力に対する閾値系の応答を調べた。フィードバックにより系の応答が遅くなりergodic-nonergodic transitionが引き起こされる事を示した。 (B)自己調節と確率共鳴--2値系の(two-state system)の数理2状態しかとり得ない系はダブルウエル系の近似としてよく研究されている。我々は確率過程として表された2値系のの2状態間の遷移確率に自己調節メカニズムを採り入れ、その効果を確率共鳴との関係で議論した。 (C)自己調節と情報処理--Filtering and Application to Picture Processing聴覚系における高感度性の説明に近年自己調節(self-tuning)というアイデアが展開され成功を収めている。これは、ノイズの大きい、小さいは環境に依存するので、自己調節あるいは適応により、聴覚系に現われるパラメータを変動させようというものである。我々はこの考え方を閾値系に応用し、単純な学習則を考案し、これの実際問題への応用を考えた。画像処理の問題への応用に関しては、カラー画像に対して高圧縮の方法論を展開した。また、自己調節の考えの基本的な部分に対しては、フィルター理論を用いて議論した。
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