研究概要 |
二重指数公式は,解析関数の定積分を効率よく計算することを目的に1974年に高橋秀俊と研究代表者森によって提案されたもので,現在では科学技術のさまざまな分野で使われるようになっている.この公式を導く基本になっているものが二重指数変換である.以前の研究で,この二重指数変換をいわゆるSinc関数と結びつけることによって,積分以外のいくつかの数値計算アルゴリズムに対する強力な計算法を導いた.このような計算法をDE-Sinc法と呼ぶ.具体的には,このDE-Sinc法を不定積分の計算に応用し,数値不定積分公式,累次積分公式,さらにはVolterra型積分方程式の効率的な数値解法を導くことに成功した.本研究では,この結果をさらに拡張し,DE-Sinc法とGalerkin法あるいはcollocation法とを結合し,常微分方程式のさまざまな初期値問題および境界値問題に対する高精度の計算法を導くことを目指した.その結果,2階常微分方程式の境界値問題に対するGreen関数法,4階常微分方程式の境界値問題に対するGalerkin法,2階特異摂動問題に対するGalerkin法およびcollocation法,弱い特異核をもつ積分方程式に対する数値解法,あるいは微分・代数方程式に対する数値解法として,いずれも高精度な解を与えるアルゴリズムを導くことに成功した.とくに,特異摂動問題に対する解法では,特異摂動のことに特別な注意を払わずとも十分高精度な解が得られることは大きな成果であると考えている.微分・代数方程式の場合は適用できる方程式の形に制約があったり,もとの制限条件の方程式を微分しなければならない場合があるなど,まだ解決すべき問題が多くある.今後はこのような問題の解決をはかりつつ,さらに二重指数変換の適用分野を広げていきたい.
|