保存的セルオートマンの研究においては、セルオートマトンの状態を時間的に変化するセルの集合として表現するEuler表現と、粒子の運動として見るLagrange表現というものが存在する。今年度は、交通流を粒子の運動としてとらえ、その運動を微分方程式で記述する最適速度モデルに注目し、その時間離散化、超離散化を試みた。その結果として、連続極限において最適速度モデルとなる離散モデルの構築に成功し、さらにその超離散化によってLangrange表現のセルオートマトンモデルを得ることにも成功した。また超離散化したモデルが、交通流セルオートマトンモデルとしてよく知られている福井・石橋モデルを含んでいることもわかった。この結果は論文"On a discrete optimal velocity model and its continuous and ultradiscrete relatives"にまとめられている。最適速度モデルは微分方程式のモデルとしては、非常によく用いられているモデルであり、このモデルの超離散化により保存的セルオートマンが得られたということは、この分野の研究において、非常に大きな成果で言える。Euler表現も含めて、このモデルのEuler-Lagrange対応を明らかにすることが、今後の重要な研究課題となると思われる。
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