研究概要 |
本研究は,表面のナノ計測に用いられてきた原子間力超音波顕微技術(AFAM)を加工技術として発展させ,新たに超音波ナノ加工法を開発すると共に,これより作製したナノ流路(超微細溝)の応用を図るものである.ナノ流路の加工・評価等を行う本年度の成果は以下のとおりである。 1.ナノ加工用集中質量型カンチレバーを用いて,プラスチック表面に対して,交差を有する溝加工を実施した。溝幅が数100nmの「田」の字状の溝パターンの加工に成功した。 2.本手法では,当該カンチレバーの2次共振に注目し,その際生じる探針先端の横振動(摺動振動)を利用している。表面計測および加工時には,タッピングモード用の振幅減衰の制御機能を転用し,シアフォース制御を実現している。しかしながら,しばしば制御不安定を経験した。そこで,有限要素法を用いて,当該カンチレバーの振動モード解析を行い,探針先端運動の詳細を調べた。その結果,はり振動理論では予測できなかった振動モードが存在することが明らかになったが,加工時に使用するモードは,はり振動理論の予測どおりの運動(探針先端の横振動)になっていることがわかった。これらの結果より,制御不安定発生の原因として,不適切な探針先端形状(接触部が振動の一周期の間に変化するような微細な複数の凹凸をもった先端など),探針と試料表面間ではなく集中質量(棒状の質量)先端と試料表面間の静電的相互間力の発生,振動検出器の劣化による出力ノイズの増加が推測された。
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