研究概要 |
本研究は,従来にない超音波ナノ加工法の基盤確立と共に,これより作製したナノ流路(超微細溝)の応用を図るものである。本研究の成果は以下のとおりである。 1.加工用集中質量型カンチレバー 探針の摺動力を強化した慣性モーメント増強型の集中質量型カンチレバーを新たに作製した。ここでは集中質量として直径30μmの金細線よりなる棒状質量を用いた。また,理論的検討により,集中質量とカンチレバーの慣性モーメントの比が約4倍以上であれば,2次モードの共振において,集中質量(棒状質量)の重心を回転中心とする一自由度の角振動モデルと等価になることがわかった。 2.流路の超音波加工と評価 樹脂表面に幅数100nm,深さ数10nmの溝状流路の作製に成功した。通常タッピングモードと呼ばれるカンチレバー制御モードを本集中質量型カンチレバーの2次モードに適用することにより,実質的に,シアフォースモード(せん断力制御)が可能となることを実証した。また,振幅減衰率の調整により,表面形状計測も可能であることを示した。加工溝の例として,溝幅が数100nmの「田」の字状の溝パターン加工を実施した。本シアフォース制御では,しばしば制御不安定を経験した。そこで,有限要素法を用いて,当該カンチレバーの振動モード解析を行い,探針先端運動の詳細を調べた。その結果,はり振動理論では予測できなかった振動モードが存在することが明らかになったが,加工時に使用するモードは,はり振動理論の予測どおりの運動(探針先端の横振動)になっていることがわかった。これらの結果より,制御不安定発生の原因として,不適切な探針先端形状(接触部が振動の一周期の間に変化するような微細な複数の凹凸をもった先端など),探針と試料表面間ではなく棒状質量先端と試料表面間の静電的相互間力の発生,振動検出器の劣化による出力ノイズの増加が推測された。
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