昨年度においては、チタン粉末シート、または金属材料シートを用いた積層法による3次元ポーラスネットワーク構造の作製技術の確立を目指し、それぞれの技術の特徴や課題などについての比較検討を行った。以下にその概要を示す。 1)薄膜シートの使用による膜厚方向の高分解能化 金属材料シートを用いた積層法において、初年度よりも薄い膜厚110μmのチタンシートを用い、幅約130μmでのレーザカッティングに成功した。この値はチタン粉末シートを用いる方法と同程度の膜厚分解能に相当する。しかしながら、表面に付着したドロスの研磨工程でのシートのゆがみが観察され、後の放電プラズマ焼結時に悪影響を及ぼすことが明らかとなった。 2)放電プラズマ焼結条件の最適化による高精度造形方法の確立 金属材料シートを用いた積層法における放電プラズマ焼結の際、構造体の気孔率増大に伴い、焼結時の局所構造への圧力負荷が原因と推測される焼結体の変形が観察されたが、空間保持材として酸化アルミニウム粉末を気孔に充填することにより改善した。また、シート積層時、構造体のZ軸方向(圧力方向)に貫通するφ2mmのチタンロッドを複数本配置した結果、XY方向の積層位置エラーが、初年度の半分以下の±約70μmに低減した。 3)チタン粉末シート、または金属材料シートを用いた積層法による3次元ポーラスネットワーク構造の作製技術の検討 有気孔ネットワークを持つ歯科インプラント作製技術への応用を検討した結果、チタン粉末シートによる積層法では、作製したシートの断面形状、及び焼結体サイズのばらつき、及びそれに伴う低構造体強度が課題となる。一方、金属材料シートを用いた積層法では、生体親和性向上に不可欠となる構造体表面への微細構造の付与技術が課題である。従って、予定していた歯科インプラントの作製及びその評価の実施には至っていない。
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