研究概要 |
本年度は主として高機能薄膜被覆材料の創成,ならびにその表面性状と機械的特性に関して実験的検討を行った.得られた主な結果を以下に示す. まず,高周波(RF)スパッタリング装置を用いて,種々の成膜条件により電子基板用ガラス上に,アルミナ(A1203)・炭化ケイ素(SiC)二層膜および窒化チタン(TiN)単層膜を被覆し,薄膜被覆材料を創成した.被膜表面について,走査型レーザ顕微鏡により表面粗さなどの表面性状の3次元的観察および表面気孔率の計測を行った.A1203/SiC被膜の表面粗さ,気孔率に関しては成膜条件に対してほとんど依存しなかった.TiN被膜については,表面粗さは膜厚が厚いほど粗くなり,また膜厚が厚く,RF出力が低いほど気孔率が大きくなることがわかった. 機械的特性としては,超微小硬度計により被膜硬さを,小型引張試験機により被覆材の曲げ強度をそれぞれ計測した.A1203/SiC二層被覆材の硬さは膜厚が厚いほど,またRF出力が高いほど高硬度になった.低RF出力で成膜したTiN被覆材料では,膜厚と硬さとの間に正の相関が認められた.また,二層被覆材料の曲げ強度はRF出力にはほとんど依存せず,単層被覆材料よりも向上することが判明した.TiN被覆材では,全体的に同じRF出力の場合には膜厚が厚い方が,また同じ膜厚の場合にはRF出力が高い方が,曲げ強度が上昇することがわかった.なお,曲げ強度については,スパッタ時間が長くなることによりガラス基板自体の軟化に影響されることを考慮しなければならないことが示唆された.また,機械的特性の相関については,いずれの被覆材においても,高硬度の被膜の被覆材料ほど曲げ強度は高くなったが,曲げ強度と被膜硬さの関係は成膜条件に依存することが明らかになった. 以上の成果を反映し,創成条件も考慮した上で,薄膜被覆材料の健全性評価を行う必要があることがわかった.
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